税務調査までの流れと対策
税務調査とは、国税庁の管轄する組織(税務署など)が納税者の行った税務申告が正しいかどうかを確認するために行う調査のことです。
この調査の対象となるのは主として個人事業主の方々で、法人の場合は一部の企業が調査の対象となるのみです。
数字で言えば、1年の内で税務調査の対象となる法人は全体の6%程度に過ぎません。
しかし、法人の場合には個人事業主の場合よりも追徴課税の額が大きくなるケースが多きいため、可能性が低いからと言って決して油断はできません。
そこで本文では、税務調査の全体の流れを紹介しつつ、さらにその対策についても触れていきたいと思います。
事前調査
まず最初の段階は、この事前調査です。
実際に税務調査を行う前に、税務署では申告内容などを元に事前調査を行い、税務調査の対象を選定します。
この事前調査では、過去数年分の申告書の売上・仕入・経費などにおかしな点がないかが調べられ、さらには取引状況や取引先、過去の税務調査の有無やその結果、あるいは代表者個人の確定申告の内容といった点も事前調査の対象となります。
また場合によっては、実際に店舗などに出向いての内偵調査が行われることもあります。
事前通知
事前調査によって税務調査の対象となった法人または個人には、実際の調査に先駆けて事前の通知が行われます。
事前通知において伝えられる項目は以下の通りです。
- 担当者の所属官署と氏名
- 調査対象者の氏名・名称と住所
- 調査日時
- 調査場所
- 調査日と調査場所は、合理的な理由があれば変更を協議するという旨の説明
- 調査の目的
- 調査対象となる税目
- 調査の対象期間
- 調査の対象となる帳簿書類や物件
尚、調査の日時については、税務署に申し出れば変更に応じてもらえます。
実地調査
事前通知の後に待っているのは実地調査です。
一般に税務調査と呼ばれているのはこの実地調査のことで、この段階になって初めて調査官が店舗または事務所に実際に訪れることになります。
実地調査の大まかな流れとしては、まず初めに代表者との面談が行われ、その次に帳簿の調査が行われるという順番になります。
ちなみに、帳簿調査において調べられる書類には以下のようなものがあります。
- 総勘定元帳
- 通帳
- 領収書・請求書
- 契約書
- 労働者名簿などの従業員関係の書類
- 源泉徴収簿などの給与関係の書類
- 申告書の控え
- 議事録
調査結果の連絡
実地調査が終了すると、調査官は収集した資料などを一度持ち帰り、これを分析・検討します。そしてその結果、何ら問題がないということになれば、税務署から「適正な申告でした」と通知されます。一方、もしも問題があると判断された場合には指摘事項が通知され、申告の修正などが必要になります。
申告に誤りがあった場合の対応
実地調査の結果、申告した内容に誤りがあることが分かった場合には、「修正申告」または「異議申し立て」を行うことになります。
まず、修正申告を行うのは、税務署から申告内容に誤りがあると指摘されて、その指摘を認める場合です。
一方、異議申し立てを行うのは、指摘された内容が不服な場合です。この場合には、更正処分を行った税務署に対して再調査の請求(異議申し立て)を行うことになります。
またもう一つの方法として、国税不服審判所長に対して審査請求を行うという選択肢もあります。
税務調査の対策
税務調査を受ける際には、いくつかの対策を考えておく必要があります。
もしも全くのノープランで調査に立ち会った場合、とんでもない損をしてしまうことにもなりかねません。
ここでは、3つの対策を紹介します。
余計なことを言わない
税務調査に際して法人代表者または個人事業主が行わなければならないのは、聞かれたことに素直に答えるということだけです。要するに、余計なことを言わなければそれで十分なのです。
もしも余計なことを言ってしまえば、言葉尻を捕まえられて不利な結果になってしまう可能性があります。
感情的にならない
税務調査を受ける法人・個人の中には、調査官の言葉に対して感情的になってしまう方がいます。これはある程度仕方のない部分もありますが、決して望ましい事ではありません。
とりわけ、税務調査においては調査官の印象や解釈によって結果が大きく変わることがありますから、感情的な態度・発言はできるだけ慎んだ方が良いでしょう。
証拠をしっかりと残しておく
脱税をしている法人・個人であれば話は別ですが、適切な税務処理を行っているのであれば、その証拠をしっかり残しておくことが重要になります。
証拠さえ残しておければ、申告の内容が正しいということを証明するのは簡単なのです。尚、ここで言う証拠とは、先程挙げた帳簿調査において調べられる書類のことを指しています。