法人税の実効税率引き下げによる影響とは
近年アベノミクスの一環として法人実効税率の引き下げが行われましたが、これによりどの様な影響が法人や経済に対して生じるのでしょうか?
本記事では「そもそも実効税率とは何か?」そして「法人実行税率の引き下げがどの様な影響を及ぼすのか?」について解説します。
実効税率とは?
まずは、法人税における実効税率とは何なのかについて簡単に見てみましょう。
法人実効税率(法定実効税率)とは、次に挙げる様々な税金を考慮した上で、法人に課される総合的な税率の事を指します。
その為、法人実効税率は法人税よりも高くなります。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人住民税
- 事業税
- 地方法人特別税
日本における法人実効税率は海外と比較しても高いとされており、この高い税率がネックとなって海外企業が日本に進出しづらい状況が続いていました。
こうした事態を受け、近年では日本も法人実効税率を引き下げる傾向にあり、平成25年時点で37.0%あった法人実効税率も平成30年時点で29.74%まで引き下げられました。
実効税率引き下げによる影響
さて、ではこの法人実効税率引き下げが及ぼす影響とは何なのでしょうか?
法人実効税率の引き下げにより期待される効果の1つが、海外企業による日本への進出が促進されることです。
こうした流れが強まることで、雇用創出や経済の活性化が実現すると見込まれています。
また、法人実効税率の引き下げは日本企業にとっても、設備投資に対するハードルの低下や国際競争力の増大といったプラスの効果を生み出すと予想されています。
その一方で、日本において法人税を納めている黒字企業は法人全体の3割ほどとなっており、法人実効税率を引き下げた所で大半の企業はその恩恵に与れないのでは、とする意見もあります。
いずれにせよ、法人実効税率を引き下げたからと言ってすぐさま景気が向上する、といった話ではなさそうです。
ちなみに、法人実効税率の引き下げによる影響を受けるのは「税効果会計」(※)を適用している法人に限られます。
(※)税効果会計…企業会計(収益―費用―税引前利益:会社の業績把握が目的)と税務会計(益金―損金―課税所得:公平な課税が目的)という、目的の異なる2つの会計の間のズレを調整し、適切に期間配分する為の手続き。
まとめ
法人実効税率とは、法人に対して適用される総合的な税率の事です。
この法人実効税率が引き下げられることで、海外企業の日本進出や国内企業の活性化による経済効果が見込まれていますが、実効税率引き下げの影響が表れるまでにかかる時間やその規模には疑問が残る、という事でした。
税効果会計を適用している法人の方々は、今後の法人実効税率の変動に注目しておくことが重要となるでしょう。