消費税の「簡易課税制度」とは・免税事業者の条件
我々一般消費者が商品を購入したりサービスを利用したりする際には、必ず消費税を支払っています。ですが、これはあくまでも間接的な支払いであって、実際の納税業務は事業者が行っています。
また、これはあまり知られていないことですが、事業者が消費税を納める際の納税額の計算方法は一つではありません。
ここでは、そんな中でも簡易課税制度という仕組みにスポットライトを当ててみたいと思います。
本則課税と簡易課税
事業者が消費税を納税する際の納税額の計算方法には、本則課税と簡易課税の2つがあります。
まず本則課税とは、「本則」という言葉が示す通り、事業者が消費税の納税額を計算する際の原則的な方法です。
本則課税の計算方法は、「課税売上にかかる消費税額-課税仕入にかかる消費税額=納税する消費税額」となります。
一方の簡易課税は、本則課税とは反対の例外的な計算方法です。
簡易課税の計算方法は、「課税売上にかかる消費税額-課税売上にかかる消費税額×みなし仕入れ率=納税する消費税額」となります。
尚、この計算式に使われている「みなし仕入れ率」とは、課税売上高に対する税額の一定の割合のことを指しています。
ちなみに、このみなし仕入れ率は卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業及びその他の事業という6つの売上の区分毎に設定されています。
それぞれのメリット
本則課税と簡易課税には、それぞれにメリットがあります。
まず本則課税について言うと、高額な設備投資を行った年度は消費税額の支払いが増えるため、還付を受けることができます。
さらに、この制度には適用期間の強制がないため、対象事業者でさえあれば今年度は本則課税で申告し、翌年度は簡易課税で申告するということも可能になります。
一方の簡易課税では、実際に支払った消費税よりもみなし仕入率で計算された消費税が上回る場合に得をすることになります。
例えば、卸売業や小売業といった業種であれば、みなし仕入率が80%以上となると節税になります。
また、弁護士や税理士、医療、介護、不動産賃貸業などの人件費が経費の大部分を占める業種であれば、みなし仕入率が低くても節税効果を得ることができます。
加えて、消費税の区分をする必要がないので、本則課税よりも作業の手間が少ないというのもこの制度のメリットです。
免税事業者の条件
簡易課税制度を利用できる免税事業者になるためには、1つの条件を満たさなければなりません。それは、基準期間の課税売上高が5000万円以下であるということです。
この条件を満たさなければ、どんなに節税をしたいと思っていても簡易課税制度を選択することはできません。
そしてこれとは反対に、基準期間の課税売上高が5000万円以上である場合には、本則課税制度を選択しなければならなくなります。
ですから、どちらの制度でも課税売上高が決まった時点で選択肢が一つに絞られるということになります。
税務署への届出
簡易課税で計算をするためには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用課税期間の開始の日の前日までに税務署へ届け出なければなりません。
適用課税期間は、個人事業者の場合には1月1日から12月31日までの1年間、法人については事業年度ということになります。
尚、一旦簡易課税制度を選択すると、選択した課税期間と翌課税期間の変更は行えません。