法人で赤字決算が出た場合の対処法
企業経営で毎年黒字決算の状態を続ける事は非常に困難です。
特に創業間もない企業の場合、どうしても立ち上げ~数年間は赤字決済となる年度が出てきてしまうものです。
しかし、赤字決算が発生した際に利用可能な救済制度を活用する事で、翌年度以降の法人税を軽減したり昨年収めた法人税の還付金を受け取ったりする事が出来ます。
本記事では、法人経営において赤字決算になってしまった場合の対処法や、赤字決算を行う事のメリット・デメリットについてご紹介します。
法人で赤字決算が出た場合の対処法
それではまず、法人で赤字決算が発生した際に活用すべき対処法について見てみましょう。
繰り越し控除制度を利用する
1つ目にご紹介する対処法は、「繰り越し控除制度」を利用するというものです。
繰り越し控除制度とは、その年度に発生した赤字分を「繰越欠損金」として繰り越して翌年以降の課税所得から控除する事で、翌年以降の法人税を軽減する事が出来る、といった制度です。
赤字分の繰り越し期限は最長10年間で、かつ資本金が1億円未満の中小法人であれば、黒字が出た年度に繰り越されている赤字分を全額控除する事が可能となっています。
ただしこの繰越控除制度を利用する為には、欠損金が生じた事業年度において青色申告書の確定申告書を提出している事、そしてそれ以降の各事業年度においても確定申告書(青色でも白色でも可)を提出している事が必要となります。
繰り越し還付金の受け取り制度を利用する
2つ目にご紹介する対処法は、「法人税の繰り越し還付制度を利用する」というものです。
この制度は資本面で不安のある中小企業の救済を対象としたもので、「確定申告書(青色申告書)を提出している資本金額1億円以下の法人」は、赤字決算の出た際にその前期に支払った法人税の還付を受けることが出来る、といった制度となっています。
還付金として企業が受け取れる額の上限は前期に支払った法人税までとなっており、前期に青色申告書である確定申告書を提出していない場合、繰り越し還付金を受け取る事は出来ません。
赤字決算のメリット
さて、ここまで赤字決算となってしまった場合の対処法についてご紹介しましたが、世の中には様々な理由からあえて赤字決算の状態にしている企業が数多く存在します(日本国内の約7割の中小企業は赤字決算状態と言われている)。
ここからは、赤字決算となる事で企業側に生まれるメリットについて見てみましょう。
節税効果が生まれる
赤字決算によって企業側に生じる最大のメリットは、法人税の節税効果です。
法人税は原則として、収入から支出を差し引いた利益(所得)に対して発生します。
ところが赤字決算となって利益(所得)が発生しなかった場合には、この法人税を支払う必要がなくなり、節税効果が生まれるのです。
また、赤字決算が発生すると先ほどご紹介した「繰り越し控除」や「繰り越し還付」制度を利用出来ると言う点でも、節税効果が発生します。
ただし、赤字決算の年度であるからと言って税金が全く発生しない、というワケではありません。
法人が納める義務のある都道府県民税や市町村税には所得に関わらず課税される「均等割り」という制度が存在するので、例え赤字決算の年度であろうともこれらの税金を最低7万円程度支払う必要があります。
赤字決算のデメリット
その一方で、赤字決済となった場合には次の様なデメリットが発生します。
金融機関からの融資を受けづらくなる
赤字決算による1つ目のデメリットは、金融機関から融資が受けづらくなってしまうという点です。
銀行を始めとした金融機関は融資先となる企業の実績や経営状況を基に融資の可否を判断する為、赤字決算状態の企業はどうしても融資対象となりづらくなってしまいます。
更に、2期連続で赤字決算となった企業は金融機関から融資額の一括返済を要求されてしまう可能性も高くなってしまいます。
よって節税対策だからと言って、儲かっているにも関わらず赤字決算を繰り返す事はおすすめ出来ません。
債務超過により倒産するリスクがある
赤字決済による2つ目のデメリットは、赤字決済を繰り返す事で累積赤字が増大し、債務超過による倒産を引き起こす恐れがあるという点です。
まとめ
赤字決済が出てしまった場合には、繰り越し控除や法人税の繰り越し還付制度といった制度を活用する事で節税を行う様に心がけましょう。
また逆に、節税対策としてあえて会社を赤字決済の状態にするといった経営テクニックも存在しますが、そういった手法を取る際には赤字決済を繰り返す事によるリスクもしっかりと把握しておくことが必須となります。