決算賞与は節税に繋がるか
決算賞与は名称の通り、決算期の業績に応じて支給する賞与です。
一般的に賞与は夏と冬に出すものですが、決算賞与は会社の決算月前後に出します。
当然ですが従業員へ賞与として支給したお金は会社の損金となり、出した分だけ会社(決算)の利益が減って税負担が軽減されます。
会社(決算)の利益を削って節税する効果だけではなく、「給与等の引上げを行った場合の税額控除(給与等の引上げ及び設備投資等を行った場合等の税額控除)」によって、より大きな節税効果を得ることが可能です。
決算賞与のルール
原則として決算賞与は決算日の前に従業員への支払いを済ませているものですが、今期中に従業員へ賞与明細の通知と損金処理を行い、決算日から1ヶ月以内に支払いをすれば決算賞与の要件を満たせます。
決算日の2~3ヶ月前に今期の概算利益を計算し、利益に応じて決算賞与を出すのか?出す場合はいくらにするのか決める流れが一般的です。
通常の賞与は求人や雇用契約に賞与が年に何回あるのか明記する必要があり、会社側が利益を出しているのに賞与を出さないと雇用法違反になる恐れがあります。
決算賞与は利益が出ていても出すかどうかは経営者の判断で決められます。
節税効果
法人の場合は様々な種類の税金があり、それぞれ税率の算出方法が異なります。
節税対策する際に重要なのが法人税で、法人税率は原則として課税所得800万円以下の部分と800万円超えの部分で異なります。
決算賞与を活用して会社の利益(課税所得)を調整できれば、課税される税率を引き下げることが可能です。
賞与を増やせば優遇される?
冒頭で紹介している通り、決算賞与を節税に繋げるためのポイントは
「給与等の引上げを行った場合の税額控除(給与等の引上げ及び設備投資等を行った場合等の税額控除)」
を活用できるかです。
制度の概要をご覧ください。
- 対象は青色申告する法人
- 平成30年度~令和3年度までの間に開始する事業年度が対象(延長の可能性あり)
- 国内雇用者かつ継続雇用者であること
- 要件をざっくりまとめると前年比より給料支給額が増えている
- 要件を満たせば原則として15%。上乗せ要件を満たせば最大20%の優遇が受けられる
参考元URL 国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927.htm
実際には細かいルールがあるので、必ず国税庁のサイトから制度の詳細を確認するか税理士などの専門家から助言を受けてください。
創業1年目は比較される前年給与がないため対象外になり、2年以上継続して優遇を受けるには毎年給料の支給総額を増やし続けないといけません。
決算賞与の支給も「給与等の引き上げを行った」とみなされます。
つまり、決算賞与を出すことで社員の年収が高まれば、控除の要件を満たしやすくなります。
決算賞与のデメリット
決算賞与には以下のデメリットがあります。
- 会社の利益とキャッシュが減る
- 手続き(経理処理)が面倒
- 振込手数料が余計にかかる
- 社員から来期以降の支給も期待される
決算賞与は社員への利益還元を行う良い会社だと思われ、社員のモチベーションを高められるメリットがあります。
ただし、支給額だけではなく税理士報酬の上乗せや振込手数料、経理スタッフの人件費などのコストがかかるほか、将来的に社員の不満やモチベーション低下へ繋がる恐れがあります。
節税だけを意識して決算賞与を出すのではなく、従業員のモチベーション管理や将来的な問題・影響を考慮した上で検討しましょう。
決算賞与を出す会社は少数派ですが、税制面の優遇制度もあるので節税対策をしたい決算の前には一度検討してみる価値があります。